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新しき年の始めの初春の・・・『万葉集』大伴家持の歌
新(あらた)しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)
『万葉集』に収められている、大伴家持の歌です(巻20/4516)。中学や高校の教科書の『万葉集』の章でも、ときどき見かけます。
<大意>
新しく迎えた年の正月、この初春の今日すがやかに降る雪と同じように、どんどん積み重なっておくれ、良きことどもよ。
国の内外でたてつづけに重々しく暗い報がもたらされる今年の暮れ、せめて新しい年には良いことがつづくようにと願わずにいられない、そんな方もおられるかと思います。万葉の昔も人の心は同じだった、というよりも、古来の先人たちの心を有形無形さまざまに受けついで、今日の私たちのありようも、形づくられているのではないでしょうか。
なお、近代以降の文学の考え方、あるいは現代の感覚からすれば、「年が明けたからと言って良いことばかりあるはずがない」というシニカルな批評も当然出て来ると思われまが、天変地異のみならず人事や男女の仲までも、神の思し召しであり前世からの宿縁であると信じていた古代のこと、初春に「吉事」を願うのも心からの「願い」であり、こうした歌によって良いことが招かれると信じるだけの力が「歌」にもあった、そんな背景を押さえておいて欲しいと思います。
ちなみに「万葉仮名」では、次のようにあらわされています(岩波書店 日本古典文学大系7『萬葉集』四 参照)。
新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
この「万葉仮名」をなぜはじめに掲げたように読むのか、気になる方は、お気軽に言問学舎・小田原漂情までおたずね下さい。