高校生の現代文テスト対策 夏目漱石『こころ』本篇④<「K」の覚悟>

「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ。」
二度、「先生」はこの言葉を繰り返しました。「K」はやがて、「馬鹿だ。」と答え、さらに、
「僕は馬鹿だ。」とつづけます。この時、「K」はぴたりと立ちどまったまま、地面を見つめているのですが、あるいはこの瞬間に、彼の心の中に自死への気持ちが芽生えたのだと、読むこともできます。(先生と遺書 四十)

 そしてこれにつづく四十一の章では、象徴的な「覚悟」の言葉が、「K」の口から語られるのですが、このくだりはそのまま引用したいと思います。

(「K」が、「もうその話は止めよう」、「止めてくれ」と言ったあと)
 私はその時彼に向かって残酷な答を与えたのです。狼が隙を見て羊の咽喉笛へ食い付くように。
『止めてくれって、僕が云い出した事じゃない、もともと君の方から持ち出した話じゃないか。然し君が止めたければ、止めても可いが、ただ口の先で止めたって仕方があるまい。君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ。一体君は君の平生の主張をどうする積りなのか』
 私がこう云った時、脊の高い彼は自然と私の前に萎縮して小さくなるような感じがしました。彼はいつも話す通り頗る強情な男でしたけれども、一方では又人一倍の正直者でしたから、自分の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない質(たち)だったのです。私は彼の様子を見て漸やく安心しました。すると彼は卒然『覚悟?』と聞きました。そうして私がまだ何とも答えない先に『覚悟、-覚悟ならない事もない』と付け加えました。彼の調子は独言のようでした。又夢の中の言葉のようでした。

 この時の「K」の「覚悟」とは、どんな覚悟だったのでしょうか?

 それを考えることが、「K」の自死の理由について考える上で、大きな鍵になるはずです。「先生」は、「K」の果断に飛んだ性格をよく知るあまり、それを「御嬢さん」を得る方向に一直線に走るものかと恐れて、「K」を出し抜き「奥さん」に「御嬢さん」を下さいと談判する行動に出てしまいます。そして「K」の自死という結末(Kとの人生における)を迎えるわけです。

 みなさんは、この「K」の「覚悟」を、何に対する覚悟だと思われますか?


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