高校生の現代文テスト対策 芥川龍之介『羅生門』③下人の心理1

 『羅生門』については、連載としては3回目になります(1回目は白紙の「読解シート」、2回目がその模範解答つきのもの)。

 3回目の今回は、この小説を通して読む上でのポイントと魅力について、お話ししたいと思います。まず、この小説を読んで味わって欲しいのは、下人の心理状態の変化です(それを読みとる大前提が、第1回、2回で示した「読解シート」です)。

 はじめ、下人は自分自身が、主人に暇(いとま)を出され(仕事をくびになり)、今夜寝る場所のあてもない、行き場のない者として登場します<読解シートの①>。

 そして、その現れた場所は、荒れ果てて、狐狸が棲み、盗人が棲み、引き取り手のない死体が棄てられている、羅生門です<読解シートの③>

 そこで下人は、自分がこのまま飢え死にしないためにはどうするか、という自問をし、「盗人になるよりほかに仕方がない」という自答を、胸のうちに浮かばせます。しかし、それをすぐ実行しないだけの「心」が、この時点ではまだ下人に存在します。

 そのことは、本文では、「勇気が出ずにいた」と書かれています。ここでこの「勇気」という言葉を、単純に「プールの飛び込み板を蹴る(ような)勇気」とは考えない方が、解釈は深まると思われます。ここでの「勇気」とは、「良心(または常識)」と表裏一体のものだからです<読解シートの④⑤>

 ところで、ほとんどの学校の授業で扱われていると思いますが、下人の右の頬の、赤くうみを持った大きなにきびが、その最初の描写からずっと、定まらぬ下人の心の象徴のように、描かれています<読解シートの②>。下人の心情とこのにきびの関係に注意して、読みすすんで下さい。

 さて、下人は、とりあえずの「今夜のねぐら」を確保するため、羅生門の楼上へ上がろうとします。ここから、下人の心境が大きく変転して行くところが読みどころです。つづきは次回、ご期待下さい。


★Web上で『羅生門』を勉強して下さるみなさんのために、言問学舎の特別体験学習会として、<現代文テスト対策『羅生門』講座(生授業)>を開催することと致しました。実施要項は以下の通りです。

実施日 5月16日(土)

時 間 13:00~14:20 or 14:30~15:50 or 16:00~17:20
※高2『山月記』、高3『舞姫』を同日開催します。申し込み先着順で時間を決定します。

参加費 500円(教材費として。消費税込)
★ただしこのページをプリントして持参された方は「クーポン」扱いとして無料!

内 容 「国語力.com」掲載の内容をさらに深めるほか、前日までに掲載していない内容を
    含めます。また、参加者の質問にお答えするほか、学校ごとの試験対策もします。
    部分訳にも対応します。学校対策ご希望の方は、関連資料をお持ち下さい。

持ち物 現代文教科書(『羅生門』掲載のもの)、学校の資料(必要な方)、筆記用具

※詳細は、メール・電話にて何なりとおたずね下さい。

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